胃腸炎とかいう日常に潜む地獄

今週の木曜日、起きた時からちょっと気分悪かったことはあった。

でも吸血鬼に転職した方がいっそ効率的なのではないかしらと噂になるくらい万年貧血の私なので、あーこらまた貧血だなーと思って放置してた。

 

いつものパターンだと朝つらくてもお昼にお腹すくから、まあ昼までの我慢だと。

 

 そしたら昼になってもお腹がすかねえの。

ちょっと焦ったよね。自分の健康状態を図る指数みたいなところあるじゃない、空腹ってやつは。いや、ほんとはだいぶ焦ってたけど自分を誤魔化してたよね。

 

だだだ、だいじょうぶ…まだ慌てる時間じゃない……このお昼になっても終わらないムカムカはきっと上司に対するもの…って脳内で首ブンブン振ってた。もげるくらい。

 

で、午後2時くらい。

あーダメだ。って悟った。これは慌てる時間のやつです。ダメなやつ。体調が悪いやつだ。

でも胃腸にキテるとは信じたくなかった。だって胃腸炎すごいきついから。なったことあるからわかってた。

 

だからもう必死で身体にセカンドオピニオンをお願いしてた。別の病名は?別の病名はありませんか?つって。

 

もはや関係ない親友にも別の病名はありませんか?ってラインで聞いてた。即座に「胃がん」って帰ってきた。あいつは薄情野郎。

 

でも早引きをするためには上司に報告しなければいけない。これこれこういうことで、うんぬんかんぬん。うわめんどくさい。そしてもはやその元気もない。勇気もない。

私は誰も見てない場所に行って休み休み仕事をすることに決めた…瞬間、「奴」は来た。来たってか、口から出てきた。

 

いやもうびっくりした。

来るときは本当に唐突すぎて。えー展開早すぎー!!! 何か異世界転生してきたー!?!?ってくらい展開早すぎて、トイレに駆け込む隙すらなかったよね。

でも私はその時働いた咄嗟の機転で、オフィスではなく、オフィスからすぐ近くの非常階段のドアを開けて踊り場でピッコロ大魔王を始めた。

 

ふう、目撃者ゼロ。完全犯罪。

 

何故か見られたら負けみたいなゲームに途中からなってた。乙女だからかしら。

でもピッコロってる最中、髪の毛とか床につかないように両腕で持ち上げしゃがんでた私は乙女っていうよりヤンキー座りの卑弥呼様に見えただろうけど。

 

でも目撃者ゼロと思ってたのに、達成感いっぱいで顔を上げたらまさかのこのご時世にエレベーターとかいうものを使わず非常階段で降りてきた男性社員がいたわけ。

 

いや、もう、おめぇ、と。

 

このハイテクの時代、エレベーター使え。

文明に、流されろ。って謎の逆ギレした。心の中で。

 

でもあちらも卑弥呼卑弥呼が産んだものが見えてるもんだから、もうガン見。

多分あっちもなんて声かけていいかわからない。お互い面識ゼロ。ただ同じ会社にいるというだけの接点。初対面でゲロ。

 

「お、おかまいなく……」

 

か細い声で言ったよね。いつもうるせぇって言われてる私が中森明菜みたいな喋り声で言ったらあっち思いきり眉ひそめてた。

いや構う〜〜〜〜わかるよ〜〜構うよね〜〜私の言葉のチョイスが悪かった

ほっといて欲しかったの!!!見ないで!!!こんなアタシを!!!って言いたかったんです!!

 

でも空気を読んだのか男性社員は

「あ、それでは…」って会釈して非常階段を更に降りてった。

会釈してた時全然目があってなかったから多分アレピッコロの卵に会釈してたけどね。いいよそこは。気になる気持ちもわかるとも。

 

とりあえず至急、私はトイレに行ってトイレットペーパーを走ってとってきて床を掃除した。そしてトイレットペーパーをもう一回走ってトイレに流しにいった。

 

もう、みじめ。

 

いやこんなみじめな状況作ってるの私なんだけど、みじめ過ぎて泣いた。かわいそう。

最初から早引きしておけばよかった。心の中のチキンを「お前のせいで!」つって〆た。体調不良の時は早めに言おうね!!

 

で、上司に伝えてすぐ帰宅許可をもらい、電車に乗る私。早い時間だったから学生がいっぱいいた。優先席も学生で埋め尽くされてた。

 

うん、私も該当者がいなければ優先席には別に座っていい派だからいつもは何も言わないんだ。でも、ほら、あの、君らの前で思いっきり立ってられずにハアハア言って顔青白くしてる人間がいるから代わってくれないかな〜〜!!!また第二派がきそうなんだ!!!

 

もう心の中で叫んだし念も送ったけど、優先席に座り尽くしてる女子大生ぽいチャンネーたちは各々私以外のどこかに視線を送って目の前の私を見てくれないの。

 

こ、これが凍えて狂うと書いて「凍狂<トーキョー>」!? つめてぇ…みんなつめてぇよ…

 

ええい!! 見なくても聞こえるだろハアハアが!!立ってられずに窓にずりずりずりーってしてる人間がハアハアしてたら具合悪いだろ!!興奮してんじゃないんだよ!!って脳内でキレたけど、結局誰も代わってくれず、いっそ面白くなって駅のホームで駆け出して自販機の横でもう一回吐いた。あの時駆けつけてくれた駅員さんごめんなしゃい。

 

そんで、無事(無事の概念壊れちゃう)最寄り駅まで着いた私は家まで近いのにタクシーを使い、「万が一のためにエチケット袋をください」の一言で車内を一瞬緊張させたけど、タクシーの運ちゃんはわりと慣れっこな感じだった。運ちゃんは大変だなあ。

 

家についたらもうすげえ高熱まで出てきて、もうぶっ倒れた。はいこれ胃腸炎!!完全に胃腸炎だよこれ!!!て心の中で松岡修造が病名申告した。

うるせぇ!!!わりと初期めの段階で気づいてんだよ!! って修造には返した。

いや、まあ気づいてるならとっとと帰れって話になるんですけども。はい。

 

パートから帰ってきた母ちゃんも社畜の私が早く帰ってきた時点で緊急事態って気付いて悲鳴あげてんの。

 

「アンタ…!!!なんでこんな早く!帰ってきたの!!」

 

悪いことみたいに!!悪いことみたいに言わないで!!って言いたかったけどそんな元気もなかった私は、まるで勲章かのようにエチケット袋を指差した。

一年前も胃腸炎になったのを知っている母は状況をすぐに飲み込んで「あらかわいそう…」って言った。すぐさま病院連れてかれた。サンキューマッマ。

 

その日は私が購入したはずなのに、お母ちゃんに取られた人をダメにするクッションを「貸してあげる…」って憐れむように言われた。

完全に自分のモノにしてやがるぜこの女。マジで怖いぜ。

 

そこからまた高熱出たりもっかい吐いたりお腹痛くなったりしてたんですけど、まあ元気になりつつあるので、ご安心いただければと。

あ、誰も心配してな…あっやめて…言わないで! 寂しいから! 嘘でも心配って言ってちょうだい!!!

 

いやでも胃腸炎って簡単に言うけどマジで地獄。しかも免疫下がってると簡単になるしこれからの季節マジで注意。一年に二回なってる私が言うんだから間違いないよ。説得力鬼レベルでしょ。

みんな気をつけて。