ちょい百合な思い出ー続き
とにかく。Aとの関係を少しずつ危ぶむようになった私は、少しずつAから離れていってしまうようになった。
それに気付いたAは、悲しい顔をして、たまに私を待ち伏せして泣いちゃうこともあったけど、それを見て私は「やっぱり私の求めてる関係とは少し違う気がする」と思って、受験もあるし、その子から離れ、塾に入って勉強に集中することにした。
ちょっぴり心が痛んだけど、お互いのために離れた方がいいと思ったのだ。
しかし、ある日Aは私の前にまた現れて「勘違いだったわ。友達に相談したら勘違いだって言われたから、勘違いだったことに気付いた」と一方的な報告をしてきた。
その時の私は「え!?泣いたり悲しんでたりしてたのに、友達の一言で!?」とびっくりしてたんだけど、大人になった今考えるとちょっと切なくなる。
多分あの子は「そういうこと」にしたかったんだろうなって、今なら思う。
もうその頃には中学三年生で、私は県外に引っ越すことになっていて、自然と疎遠になった。
Aとの思い出は、ここで終わり。
そして県外の高校に入学。
そこで私はまたひとりの女と出会う。
この子も美少女だった。すごく男ウケしそうなタイプの、純朴で、笑顔が可愛くて、長い黒髪が綺麗で、少年漫画の清純派ヒロインて感じの子。実際彼女に一目惚れしてストーカーする先輩がいたほどだった。
見た目は。
もう一度言う、見た目はそうだった。
しかし中身は違った。
彼女は今までに出会ったことのないほどのおかしい頭を持っていて、彼女のクレイジーさは筆舌に尽くしがたいものだった。おそらく彼女について喋っていくうちにクレイジーさが露呈してくると思うので、あえてエピソードで例を出して語りはしない。
仮にこの女をMと呼ぼう。
Mは、とりあえず人生で初めて出会うレベルのバカだった。
勉強はできる子だったけど、ほんとにバカだった。
私はそんな彼女のバカなところが大好きだった。外見のままだったら好きになることなんて絶対なかっただろう。
何かと共通点も多く、彼女も私と一緒にいることが楽しいと感じてくれたようで、自然と2人の時間は増えていった。
仲良くなるにつれ、私はMが他の女の子と急に仲良くなったり、好きな男の子が出来ようものなら相手に嫉妬するようになった。
多分これは前回もブログで述べた、転勤族で親友と呼べる者がいなかったからこそ起きる、一種の依存だったのだろう。
Mもまた、転勤族で同じような状況だったらしく、私との距離感が異常に近かった。
私の名前を遠くから呼んでジャンプして抱きついて頬ずりしたり、食べてる飴が美味しくなければ口から出して私の口に入れたりした。今考えても何やってるんだあいつは。
これは、またAとの事件が再発するんでねーか?と私は恐れた。
直後思ったのは「ちょっと距離置こう」だった。
Mが私に好意全開だったのも距離を置きたくなった原因だった。やっぱり私は自分のことを大好きなやつとどういう風に接すればいいのか分からなくて、しかもこのまま進んだら完全に百合ルートになってしまうんじゃないかと懸念したのだ。
私は彼女と距離を置いた。
距離を置いて、別の女の子と親交を深めるようになった。
ところが、Aと違ってMは距離を置かれて黙ってるタイプじゃあなかった。
Mは私が距離を置いたことにすぐ気付き、私にこうメールを送ってきた。(ああ古き良きガラケー時代)
「おいお前。私と倦怠期やぞ。どないすんねん」
ツッコミ所があり過ぎる文章だった。
しかし高校に入りたての私にそんなツッコミスキルはまだ存在せず、凡庸中の凡庸な返しをしてしまった。
「そんなことを言われても…」
Mは私のそんな普通すぎる返しにキレたのかこう返してきた。
「もういいです」
あ、傷付けた。と思った。
距離を置いたことに気付かれて、またAの時のように傷つけてしまった。
もういいです、にどうメールを返信すればいいかも分からず、私は途方にくれて次の日学校へと向かった。
ちょっと彼女とどう挨拶すればいいかも分からなかった私に、何故か右手にスーパーボールを持った彼女はこう言った。
「おはよう。なあ屋上からスーパーボール落としたらどうなると思う?」
昨日の倦怠期のくだりは何やねん。とか、
いきなりお前は何言い出したんだ。とか、
頭沸いてんのか、とか、
言いたいことはいっぱいあったけども
私は言ったのは一言だけだった。
「やろう」
その日私たちは屋上からスーパーボールを落として遊んだ。
めちゃめちゃに楽しかった。
何かこいつ相手に好かれたから対応が分からんとか、倦怠期の解消の仕方とか、友達づきあいの仕方を考えている方がアホらしく思えて、
私はそれ以降友達に「えっMちゃんのことが好きなんやとおもってた」「あなた女の子が好きだったんじゃないの?」と言われ続けようが、Mと仲良くすることをやめなかった。
……いつも抱きついてくるのも、好き好きアピールをしてるのも、中学の時と違って全てMからなのに、何故私が疑われていたのかは分からなかったけども。
何だ、出てるのか。百合オーラが。
リリィなオーラがビンビンなのか。やかましいわ。
ーーAの思い出も、Mとの思い出も尊くて、私は変わらず百合コンテンツは好きなままである。
今も私はMと仲良くし続けているし、
相変わらず好きと言われると対応に困って照れてしまい、ガチ照れするが、この件を経て唐突に人と距離を取るのはほとんどなくなった。
余談だが、
Mも私と仲良くなりすぎたと感じた時、「こいつもしや…私にその気はないぞ…?」と思って戦々恐々としていた時期があったらしい。
私、その時期しらねぇ。
とりあえずその話を聞いて私はひとしきり笑った。
以上が、私のちょい百合な思い出。
やがて君になる、アニメ最高でしたね。
二期待ってます。