アイナナ二部をやった彼氏が推し変した話

 

「あの九条という男は何なの?」

 

カレスは激怒した。

必ず、かの 九条 鷹匡(くじょう たかまさ)をどうにかしなければならぬと決意した。

カレスにはアイドルがわからぬ。

 

とか言って。

とか言ってね。

 

先日ブログでも共有したんですけど、アイナナに彼氏を落としてみたら

見事に彼氏がハマりまして。二部をやってくれることになりました。

ちなみにブログを上げたらバズった旨も伝えたら

「天ちゃんの力だぞ」とかえらい真顔で言うから

お前天にぃの何なんだ? 

 

でも中々二部を進めてくれないの。

かと言ってアイナナをしていないのかと思ったら、違うっていう。

シークレットナイトを朝まで徹夜でやり倒してたとか言って。

幸せを壊したくないけどアイナナのコンテンツには触れたいのかなとか思って

この人4部まで進んだらマジで死ぬんじゃないかしらと心配した。

 

でもそんな彼氏からね。先週ですよ。

いつもはおやすみと言ってくれる彼氏からのLINEが来ないなーと思ってたら

朝から怒涛の鬼電話。

 

こちらは朝早いから服とかスポーンて脱いで、全裸で髪の毛とかしながら

歯とか磨いてるのに開口一番この言葉から始まったから。

私も全裸でこう切り返すわけです。

 

「どこまでいったの?」

「天ちゃんだけじゃなくカワイイ女の子を九条が囲っていることが分かりました」

「結構中盤まで進みましたね」

あの男、天ちゃんていうカワイイコ囲ってるくせに、美少女まで囲って何様?

 

九条さんへのヘイトが半端ない。

「天、おいで」と言った瞬間の九条さんが事細かにいかに怖かったかを

私に説明してくる。もう九条さんが苦情さんになる勢い。

そりゃヘイトを最初溜めるキャラではあると思うけど(私は可哀そうで好き)

この人ツクモプロダクションを目にしたら死ぬのでは?と重ねて心配した。

 

「他に何かあった?」

「代永が、代永がさ」

「ああうん」

 

あらかじめ言うと彼氏は代永さんが個人的にあまり好きではなかった。

かわいらしい声をしているところと、

あざとさをたまに演出しているところが

男性目線からはあまり受け付けないと言っていて、

アイナナを始める時もずっと三月のことは代永さんのキャラとしか思えなかったのか、ずっと代永呼びを続け

 

「いや、代永じゃない。三月」

 

出たーーーーーー!!!

レディースアンドジェントルルルルルメーン!!(激しい巻き舌)

三月呼びが始まりましたァーーーーーーーーーーー!!!!

心の中でピーヒャラピーヒャラと縦笛を吹きながら私はニヤニヤ笑いつつ彼氏に聞いた。

 

「もう代永さんって呼ばないの」

「三月だよ。三月は、三月なんだよ」

「何その優しい声なに」

「三月さぁ……本当わかる……何を頑張ればいいのか分からないけど……

 頑張らなきゃいけないのは分かってて、好かれたい人に好かれたいのに

 うまくいかなくて……」

 

泣いているの?

と聞きたくなるくらいの感情が入った声だった。

多分私と話しているようで、もう彼は多分三月と喋っていた。電話の向こうで遠い目をしているのが手に取るように分かった。

 

「三月というキャラを動かしている代永さんに感謝をしなければいけない」

「そうですね。それはそうですね。ええ」

「三月を好きな女性は確実に男を見る目があると思う。男なら間違いなく三月の魅力が分かる。そんな感じ」

「はい。メッゾはどうですかね?」

「十さんとチーム組むことになって、多分十さんがここから間に入ることになったけど、やっぱね〜。ちょっと心配だよな。十さん肝心なとこでオロオロすっからな〜」

「……(何を言ってもネタバレになりそうで黙る)じゃ早く続きやれよ暇だろ?」

「暇じゃねーわぶっ飛ばすぞ!」

 

と言いつつね、やるんだろうなと思って。

一回それで電話を切ったわけです。

もう私は、いおりんが好きな彼がリスポのくだりを見たらどうなるのかとか、

ナギの伝説の記者会見とか見たらどうするのかとか、そういうとこをワクテカしてたわけ。

 

もうほんとありがたいことにブログを読んでくださった方も同じように期待されていて、

私もその様子をとくとくと語ろうと思ってた。

思ってたのよ。信じて欲しい。

 

しかし、数日前。

 

仕事終わりの私に何か物言いたげなスタンプを送ってくる彼氏。

一体なにがあったのかしらと電話をかけてみて、最近もう主語なしでも伝わる言葉を投げかける。

 

「進めた?」

「二部終わった」

「おお!? 早いな…1番印象に残ったのは?」

 

満を持して彼は口を開く。

 

二部をやり通して得た感想を

きっと彼はアイドルの成長を経て得た感想を海千山千のボキャブラリーで、手を変え品を変えーーー

 

 

がっくー」

「八乙女楽!!!!!?」

 

もう私は声が裏返った。

いやわかる。八乙女楽が格好いいのは分かるさ。彼は抱かれたい男ナンバーワンだもの。

でもアイナナ二部で印象に残ったのは? と聞かれて、男の名前だけを呟く男がいると思わないじゃない。

 

あとどうでもいいけど呼び方はポピュラーな「がっくん」ではなく、男性が人にあだ名を付けることでよくやりがちな「●ッ●ー」の並びになっていたことも気になっていた。なんで男性はニックネームを付ける時、ほぼ必ず吉くんはヨッシー西村くんはニッシー高島くんはタッカーなんや? 

まあそんなことはいい、私はちょっと動揺を隠せずに質問を繰り返した。

 

「待って、どこのシーンで?いつ?」

「だって俺、言ってなかったけど……がっくーにデートに誘われてるし」

「あ、あぁ、あの、寮に来る時の「蕎麦屋だからいいだろ?」シーンですね。なんでそんな浮気バレた女みたいな語り出しなん?」

 

もう紡ちゃんを当たり前のように俺呼ばわりする彼氏に今更もうツッコミは入れない。

彼はちょっと照れつつ続ける。

 

「誘われたの嬉しかった」

「嬉しかったんだ……」

「何勝手に断ってんの?俺」

「行きたかったんだ……」

「がっくんなんか俺のこと気にしてるし」

「まあガチ勢だからね」

「俺が現場にいる時、がっくー俺のこと明らかに気にしてるよね? ちょっと声がかっこよくなる傾向があるというか、少しだけ声が低くない?」

「何かちょっと気のせいじゃないですかねレベルのこと言い始めたぞ」

「以来ちょっとがっくーを意識するようになっちゃって…ストーリーでも何かこうごたごたしてるときに可愛さとさっぱり加減を撒き散らしていくイケメンに、はぁ(余韻)」

「余韻に入ってるやんけ」

俺はこんなイケメンに好かれているのかと思うと自己肯定感が強くなって毎日ハッピーになる。舐めるなよ。俺は八乙女楽に惚れられた男だぞ

「今の台詞確実に拡散してやるからな」

「がっくー推し…」

「聞いてないやんけ。余韻まみれやないか」

 

以降、私は本題のつもりだったリヴァーレ先輩のことを聞くと「千は照れずに百に最初から超情熱的な愛情を伝えれば良かったんだよ。いい話だったけど」とサラッと触れたのち、「がっくーのように」と八乙女楽の話に戻される。果ては羽多野さんのイケメンぶりについてまで触れられる。こいつ完全に推し変してやがる。

 

おかしい、同じモモ推しになってほしさぁん💓とする野望は打ち砕かれてしまったのか?

クソッッ!八乙女楽め!男まで魅了しやがって!!

 

「あ、そういえば十さんはちゃんとしてたでしょ?」

「いやー龍アニキはね」

「龍アニキ!!!?お前タマちゃんなの!?」

 

名物超高速回転手のひらドリルが炸裂している。分かったような口調で彼は続ける。

 

「俺龍アニキはやってくれると思ってたから。肝心なとこパシッと決めてくれる。流石龍アニキ。龍アニキは最高」

「天にぃを愛でて、楽推しに推し変し、龍アニキを慕うの? 何あなたそんなに三部で死にたいの?」

「天にぃはもうちょっとだけ素直なシーンとデレが欲しかった」

「三部で死にたいのね。分かった、よく分かりました。お前は三部で死ぬ」

「とうとう断言しやがったなこの女」

「せいぜい粋な棺桶を用意しておくことだな」

 

そんな訳で彼は今三部をやっております。

かわいそうなので骨は拾おうと思います。